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 陽電子寿命は陽電子が物質中に入射してから電子と対消滅するまでの時間です. 放射性同位元素22Naがβ+崩壊した際に陽電子と同時に放出される1.28MeVのγ線をスタート信号, 陽電子が電子と対消滅したときに発生する511keVのγ線をストップ信号として検出し,二つの信号の検出時刻差をとることで求められます(Fig.1).



▲ Fig.1 陽電子寿命の求め方


 陽電子寿命の長さは陽電子が消滅するサイトの電子密度に依存します.物質中の欠陥濃度が陽電子の検出限界以下のとき、陽電子は格子間位置で消滅します. 格子間位置では電子密度が高いので、陽電子寿命は短くなります.一方,物質中に空孔型欠陥が存在する場合,陽電子はそこに捕獲され,消滅することになります. 空孔型欠陥中の電子密度は格子間位置より低いので陽電子寿命は長くなります.欠陥サイズがさらに大きくなると,欠陥内の電子密度はより低くなるので,陽電子寿命はより長くなります(Fig.2). このように物質中の陽電子寿命を測定することで、空孔型欠陥の有無や欠陥サイズを推定することができます.



▲ Fig.2 陽電子が空孔型欠陥に捕獲された場合の陽電子寿命スペクトルの変化


 実際には,スタート信号とストップ信号の検出時刻差を積算することで得られた陽電子寿命スペクトルを解析することで,陽電子寿命は得られます. 陽電子寿命スペクトルの傾きは陽電子寿命の長さを表し,傾きの数は陽電子が消滅したサイトの種類数を表しています.
 Fig.3にパルス陽電子ビームを用いて測定したSiO2/Si試料の陽電子寿命スペクトルを示しました.スペクトルの傾きは1種類なので,この試料中において陽電子が消滅しているサイトは1種類であることが分かります. 解析の結果,266±1psという陽電子寿命値が得られました.Fig.4に示した第一原理計算結果との比較から,ここで陽電子が検出している欠陥は主にSi単空孔であると考えられます.







▲ Fig.3 陽電子寿命スペクトルの例

▲ Fig.4 Siの陽電子寿命の第一原理計算結果. M. Saito and A. Oshiyama: Phys. Rev. B 53 (1996) 7810.


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