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 陽電子(positron) は電子(electron) の反物質であり,質量・スピンは電子と等しく,正の電荷を持っています. 陽電子が物質に入射すると,原子核や電子と衝突を繰り返し熱化され,電子と対消滅します(Fig.1).この現象は陽電子消滅(positron annihilation) と呼ばれ,消滅時に主に2本放出します. このときγ線のエネルギーはアインシュタインの式E=mc2で与えられ,1本のγ線のエネルギーは約511keVとなります. 消滅γ線のエネルギー分布や物質中での陽電子の寿命を測定することで,空孔型欠陥を検出することができます.



▲ Fig.1 物質中での陽電子の振る舞い


 以下に陽電子消滅の特徴を列挙します.

1.検出できる欠陥のサイズは,単一原子空孔〜空隙(数十nm3)までである.
2.空孔に対して非常に敏感であり,空孔濃度が1016cm-3以上であれば検出可能である(Fig.2).
3.非破壊で欠陥を検出できる.
4.試料の温度,電気伝導性などの制限がない.とにかく陽電子を試料に当てられれば測定は可能(液体も可).
5.陽電子の入射エネルギーを変化させることで,試料表面から数μmまでの欠陥深さ分布を検出することが可能.

以上から,半導体・金属・絶縁体・高分子 など様々な材料の評価に応用することができます.


▲ Fig.2 Si中の陽電子の欠陥検出感度.単一原子空孔の濃度が1016cm-3以上から陽電子は欠陥に捕獲され始め, 1019cm-3で飽和する.ただし,飽和後も欠陥サイズの変化に対する議論は可能である.



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