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磁気機能工学研究室の研究内容

 研究室でな磁性を中心にナノテクノロジーに関わる研究を扱っています。扱う研究テーマを簡単に紹介します。

研究テーマ

1)酸化物磁性体の物性と応用

 当研究室の研究のキーテクノロジーの一つに、酸化物磁性体を精密に制御して作製する技術があります。鉄酸化物のなかでスピネル構造を持つマグネタイト(Fe3O4)とマグヘマイト(γ-Fe2O3)は昔からよく知られた強磁性体(フェリ磁性体)ですが、前者は導電性があり、後者は絶縁体です。これらを作り分けて障壁や電極材料とすることを目標に研究を進めています。

 さらにこれら酸化物と金属Fe相との間に強い磁気結合が存在することが分かりました。反強磁性結合はハードディスクやMRAM等に基礎的な構造のため、C0/Ru系に匹敵する結合強度を持ちながらも広く一般的な元素「ユビキタス元素」で構成されるため、応用上大きな意味を持つと考えています。

1-1) スピネル型酸化物単結晶薄膜の成長

;1-2) スピンエレクトロニクスの要素材料(スピンフィルター)

2)ナノ構造体の物性解明と応用

ナノ構造は、新しい物理的性質を創り出す手法として様々な研究がなされています。研究室では2次元に広がりを持つナノ構造「薄膜」、1次元的広がりを持つナノチューブ、すべての次元がナノサイズの0次元物質「超微粒子:ナノ粒子」について主として磁気的な性質を中心に研究しています。

 特に強磁性ナノ粒子は磁気記録媒体として長年研究されています。本研究室では磁気記録の「最先端磁気記録媒体材料」や新しい強磁性ナノ粒子の応用である「がん治療のための発熱効果」について研究しています。

一次元材料としてカーボンナノチューブは、将来のエレクトロニクスに多様な応用が期待されています。カーボンナノチューブを基板から成長させる方法により一次元的な電気伝導を調べています。

2-1)  超微粒子作製による窒化鉄Fe16N2の磁気異方性の研究

2-2) 強磁性ナノ粒子による癌温熱治療用加熱効果の研究

2-3) 強磁性ナノ結晶のランダム磁気異方性効果の検証

2-4) CVDカーボンナノチューブの電気伝導

1-1) スピネル型酸化物単結晶薄膜の成長

スピネル型結晶構造を持つ磁性体は格子定数約8Åの立方対称性を持ち500℃程度の強磁性転移温度をもち広く磁性材料として利用されています。高度な磁気特性の利用のため単結晶薄膜を成長させるために格子定数が約半分のMgO単結晶上に薄膜成長させることができます。 スピネル結晶の格子定数は約8.5Å、MgOは4.2Åのためちょうどマッチング良く結晶成長します。

MgO上に成長したスピネルは非常によい平坦性を持ち、1層毎に成長していく様子がRHEED観察で確かめられています。

1-2) スピンエレクトロニクスの要素材料(スピンフィルター)

GMRやTMRに始まったスピンと伝導現象の絡んだ磁気伝導現象については、非磁性絶縁体を障壁層とする単純なトンネル接合だけではなく多彩な構造の機能素子が提案されています。その一つに強磁性絶縁体を障壁層としたスピンフィルター型トンネル接合があります。


トンネル接合     スピンフィルター

  上図の左は通常のトンネル磁気接合(TMR)素子の構造を示し、右図はスピンフィルター型トンセル接合を示します。スピンフィルター型TMRでは理論的に大きな磁気抵抗比が予測されていますが、実験的に研究が始まったばかりでこれから期待のもてる研究対象です。当研究室では強磁性絶縁体としてマグヘマイト(γ-Fe2O3)単結晶を用いる研究を始めました。

2-1) ナノ構造化による窒化鉄Fe16N2の磁気異方性の研究

 窒化鉄にはγ-Fe4Nやα-Fe16N2のように室温で強磁性を示す物質が存在します。また酸化鉄と同様に存在量の多い元素で構成されているユビキタス材料の可能性が高い材料です。特にα”-Fe16N2は、巨大磁気モーメントの可能性が指摘され研究が盛んでしたが、C軸に伸びた結晶構造に由来する、大きな一軸磁気異方性が新しい応用(バックアップ用テープ媒体)に向け研究されています。窒化鉄は侵入型化合物で単相の試料が得にくいため、超微粒子や薄膜で均一な領域を限定した作製法が有効です。物性測定に適した均一度を有する材料を、(1)大きな(?)超微粒子の作製を原材料の酸化鉄粒子生成から始めて窒化、(2)配向性薄膜の成長の2方向から検討し、中性子回折などの物性測定を目指します。

2-2) 強磁性ナノ粒子による癌温熱治療の研究

癌細胞が正常細胞に比べて高熱に弱いことは古くから知られていて、それを利用した様々な治療方法が提唱されていきました。磁性体の高周波磁場による遠隔的な加熱と、ナノ粒子に癌細胞に特異的に付着する機能を与えることにより、健常細胞に影響を小さく癌細胞だけを焼灼する事が期待できます。20nm近傍の強磁性ナノ粒子を用いることで、ヒステリシス損失を積極的に利用する加熱方法の開発に挑んでいます。

2-3) 強磁性ナノ結晶ランダム磁気異方性のシミュレーション

 強磁性体のナノサイズの粒子(グレイン)が高密度に集合したナノ結晶では、非常に優れた軟磁性特性が表れて、すでにトランスなど実用段階の材料となっています。これは結晶領域より磁化の一様なサイズが大きいため、磁気異方性エネルギーが平均化されて実効的に小さくなる事に寄ります。基本的な議論から保磁力が粒径Dの6乗に比例する事が示され、実験的にも検証されています。

 研究室ではガスデポジション法と呼ばれる方法で不純物の少ないナノ結晶について保磁力の粒径依存性について実験的検証を行い、磁化配置がランダム磁気異方性にどのように影響を受けるかをシミュレーションで明らかにします。中性子散乱実験により実験とシミュレーションを結びつけて解釈することを目的とします。

上図は10x10x10の磁気クラスタ−の磁化配列をLandau-Lifshitz-Gilbert方程式に従い、シミュレーションを行った結果です。色の似た部分で磁化の方向が一様と考えられます。このように磁気モーメントがどのように空間配置しているかを計算によって想定することができます。

2-4) CVDカーボンナノチューブの電気伝導


 305-8573 茨城県つくば市天王台1-1-1