当研究室が持つキーテクノロジーの一つに、酸化物磁性体を精密に制御して作製する技術があります。鉄 (Fe) 酸化物のなかで、スピネル構造を持つマグネタイト (Fe3O4) とマグヘマイト (γ-Fe2O3) は昔からよく知られた強磁性体 (フェリ磁性体) ですが、前者は導電性があり、後者は絶縁体です。これらを作り分けて障壁や電極材料とすることを目標に研究を進めています。
One of the key technologies of our laboratory is precision control over the growth of the magnetic metal-oxide films. Among Iron (Fe) oxide, magnetite (Fe3O4) and maghemite (γ-Fe2O3) have spinel-type structures and are well known as ferromagnets (ferrimagnetic materials) from ancient times. Their electric properties are, however, totally different; the former is conductive and the latter is insulator. The purpose of our research is to grow these two materials selectively for making the barrier and/or the electrodes according to the purpose.
さらにこれら酸化物と金属Fe相との間に強い磁気結合が存在することが分かりました。反強磁性結合膜は、ハードディスクや磁気ランダムアクセスメモリ (MRAM) 等にとって不可欠な構造です。そのため、Co/Ru系に匹敵する結合強度を持ちながらも、広く一般的な元素「ユビキタス元素」で構成される、この新しい磁気層間結合膜 (Fe3O4/Feなど) は応用上大きな意味を持つ、と考えています。
Additionally, it was found that strong (antiferro) magnetic coupling exists at the interface between these oxides and metallic Fe phase. The antiferromagnetic coupling layers are, nowadays, indispensable for HDD and magnetoresistive random access memory (MRAM) etc. Thus, we believe these novel magnetic coupling layers (e.g. Fe3O4/Fe) have a great potential for above-mentioned applications since they consist of "ubiquitous" materials (found anywhere in the world) while keeping the coupling strength comparable to Co/Ru system.
スピネル型結晶構造を持つ磁性体は格子定数約8 Åで立方対称性を持ちます。また、500 ℃程度の強磁性転移温度 (Curie温度) を持ち、磁性材料として広く利用されています。この磁性体の高度な磁気特性を利用するため、格子定数が約半分のMgO単結晶基板を用いて単結晶薄膜を成長させることができます。例えば、Fe3O4は格子定数が約8.4 Åで、これはMgOの格子定数4.2 Åのちょうど2倍となります。したがって、Fe3O4をはじめとするスピネル結晶はMgO基板上に非常にマッチング良く結晶成長します。
Magnetic materials having a spinel type crystal structure have a cubic symmetry with the lattice constant of about 8 Å. Also, they have a ferromagnetic transition temperature (Curie temperature) of about 500 ℃ and have been widely used as a ferromagnetic material. In order to utilize the advanced magnetic properties of these magnetic materials, one can grow the single-crystalline thin films on a single crystal MgO substrate having the lattice constant of about half of these materials. For example, Fe3O4 has a lattice constant of about 8.4 Å, which is exactly twice the lattice constant of 4.2 Å for MgO. Therefore, spinel-type crystals such as Fe3O4 show very well lattice-matched growth on a MgO substrate.
MgO上に成長したスピネルは極めて良好な平坦性を持ち、1層毎に成長していく様子が反射高速電子線回折法 (RHEED) による観察で確かめられています。
Spinel grown on a MgO has a very smooth surface, and the layer-by-layer growth has been confirmed by the observation using reflection high-energy electron diffraction method (RHEED).
トンネル磁気抵抗効果 (TMR) をはじめとするスピンと電子の伝導が絡んだ磁気伝導現象については、非磁性絶縁体を障壁層とする単純な強磁性トンネル接合だけではなく、多彩な構造の機能素子が提案されています。その一つに強磁性絶縁体を障壁層としたスピンフィルター型トンネル接合があります。
For magnetotransport phenomena wherein conduction of electron is correlated with that of spin, such as tunneling magnetoresistance (TMR), not only conventional magnetic tunnel junction with a tunnel barrier of nonmagnetic insulator, functional elements with the various structure have been proposed. One of them is a spin-filter type tunnel junction with a tunnel barrier of ferromagnetic insulator.
図1 強磁性トンネル接合
Fig. 1 Magnetic tunnel junction
図2 スピンフィルター
Fig. 2 Spin filter
図1は通常の強磁性トンネル接合の構造を示し、図2はスピンフィルター型トンネル接合を示します。スピンフィルター型トンネル接合では理論的に非常に大きな磁気抵抗比が得られると予測されていますが、実験的な研究は始まったばかりであり、今後、非常に期待の持てる研究対象です。当研究室では強磁性絶縁体としてマグヘマイト (γ-Fe2O3) 単結晶を用いる研究を始めました。
Figure 1 and Fig. 2 show the structure of the conventional magnetic tunnel junction and spin-filter type tunnel junction, respectively. Although it has been theoretically predicted that the spin-filter type tunnel junction shows very large magnetoresistance ratio, the experimental research is in its infancy and it is a very promising research subject. We have started the research using a single crystal (γ-Fe2O3) maghemite as a ferromagnetic insulator.
ナノ構造は、新しい物理的性質を創り出す手法として様々な研究がなされています。研究室では2次元に広がりを持つナノ構造「薄膜」、1次元的広がりを持つナノチューブ、すべての次元がナノサイズの0次元物質「超微粒子:ナノ粒子」について主として磁気的な性質を中心に研究しています。
ナノ構造は、新しい物理的性質を創り出す手法として様々な研究がなされています。研究室では2次元に広がりを持つナノ構造「薄膜」、1次元的広がりを持つナノチューブ、すべての次元がナノサイズの0次元物質「超微粒子:ナノ粒子」について主として磁気的な性質を中心に研究しています。
特に強磁性ナノ粒子は磁気記録媒体として長年研究されています。本研究室では磁気記録の「最先端磁気記録媒体材料」や新しい強磁性ナノ粒子の応用である「がん治療のための発熱効果」について研究しています。
特に強磁性ナノ粒子は磁気記録媒体として長年研究されています。本研究室では磁気記録の「最先端磁気記録媒体材料」や新しい強磁性ナノ粒子の応用である「がん治療のための発熱効果」について研究しています。
強磁性体のナノサイズの粒子 (グレイン) が高密度に集合したナノ結晶では、非常に優れた軟磁性特性が表れて、すでにトランスなど実用段階の材料となっています。これは結晶領域より磁化の一様なサイズが大きいため、磁気異方性エネルギーが平均化されて実効的に小さくなる事に寄ります。基本的な議論から保磁力が粒径Dの6乗に比例する事が示され、実験的にも検証されています。
強磁性体のナノサイズの粒子 (グレイン) が高密度に集合したナノ結晶では、非常に優れた軟磁性特性が表れて、すでにトランスなど実用段階の材料となっています。これは結晶領域より磁化の一様なサイズが大きいため、磁気異方性エネルギーが平均化されて実効的に小さくなる事に寄ります。基本的な議論から保磁力が粒径Dの6乗に比例する事が示され、実験的にも検証されています。
研究室ではガスデポジション法と呼ばれる方法で不純物の少ないナノ結晶について保磁力の粒径依存性について実験的検証を行い、磁化配置がランダム磁気異方性にどのように影響を受けるかをシミュレーションで明らかにします。中性子散乱実験により実験とシミュレーションを結びつけて解釈することを目的とします。
研究室ではガスデポジション法と呼ばれる方法で不純物の少ないナノ結晶について保磁力の粒径依存性について実験的検証を行い、磁化配置がランダム磁気異方性にどのように影響を受けるかをシミュレーションで明らかにします。中性子散乱実験により実験とシミュレーションを結びつけて解釈することを目的とします。
上図は10x10x10の磁気クラスタ-の磁化配列をLandau-Lifshitz-Gilbert方程式に従い、シミュレーションを行った結果です。色の似た部分で磁化の方向が一様と考えられます。このように磁気モーメントがどのように空間配置しているかを計算によって想定することができます。
上図は10x10x10の磁気クラスタ-の磁化配列をLandau-Lifshitz-Gilbert方程式に従い、シミュレーションを行った結果です。色の似た部分で磁化の方向が一様と考えられます。このように磁気モーメントがどのように空間配置しているかを計算によって想定することができます。
窒化鉄にはγ-Fe4Nやα-Fe16N2のように室温で強磁性を示す物質が存在します。また酸化鉄と同様に存在量の多い元素で構成されているユビキタス材料の可能性が高い材料です。特にα"-Fe16N2は、巨大磁気モーメントの可能性が指摘され研究が盛んでしたが、C軸に伸びた結晶構造に由来する、大きな一軸磁気異方性が新しい応用 (バックアップ用テープ媒体) に向け研究されています。窒化鉄は侵入型化合物で単相の試料が得にくいため、超微粒子や薄膜で均一な領域を限定した作製法が有効です。物性測定に適した均一度を有する材料を、
窒化鉄にはγ-Fe4Nやα-Fe16N2のように室温で強磁性を示す物質が存在します。また酸化鉄と同様に存在量の多い元素で構成されているユビキタス材料の可能性が高い材料です。特にα"-Fe16N2は、巨大磁気モーメントの可能性が指摘され研究が盛んでしたが、C軸に伸びた結晶構造に由来する、大きな一軸磁気異方性が新しい応用 (バックアップ用テープ媒体) に向け研究されています。窒化鉄は侵入型化合物で単相の試料が得にくいため、超微粒子や薄膜で均一な領域を限定した作製法が有効です。物性測定に適した均一度を有する材料を、